やっぱり黒メイプルのストラトを買ってしまった話

最近Fenderカスタムショップのストラトを買いました、というお話です。

実は、数年前にFenderのカスタムショップのストラトを持っていたのですが、子供が産まれて金策の必要が生じたため、手放したことがありました。

当時は、USAのHighway Oneのストラトが手元にあったので、それを弾いていれば満足できると思っていました。

しかしこのHighway One、じっくり向き合ってわかったことですが、かなりクセが強いギターらしく、どーやって弾いてもストラト「らしい音」が出ない。こちらのレビューと試行錯誤についてはまた別の投稿で詳しく書きたいと思います。

それからというもの、何かが違う(全然違う)と思いながらギターを爪弾く日々…。

それから10年ほど経ちました。

子供も大きくなり生活もなんとか安定してきたので、たまには自分にご褒美を…と思い、アラフォー誕生日を口実に相棒と言えるギターを手にするべく、新調を検討していました。

私がストラトに求める条件は、ブラッキーへの憧憬からFenderの黒・メイプル指板・スモールヘッド仕様であることは外せません。それでいて、実用性の高いコンテンポラリーな仕様であること。

ストラトの音を狙って突き詰めると、ビンテージに近い仕様を求めがちなのですが、近年Mateus Asatoのようなプレイヤーのコピーなどするようになったのもあり、現代的なプレイにも対応できるプレイアビリティの高さも求めたいと思うようになりました。

つまりは「イマドキのストラトが欲しい」ということです。

これらの要求を満たす仕様のギターは現在ではアメスタ後継のAmerican Professionalシリーズや、アメデラ後継のAmerican Eliteシリーズなどから出ているようです。

一瞬、好きなプレイヤーであるRichie Kotzenシグネチャーモデルはどうかという思いもよぎりましたが、忘れることにしました。というのも、秋葉原の某楽器屋でそのギターを見つけて試奏していたところ、店主に「歪ませる前提のギターなんて楽器じゃねぇ」と難癖をつけられるてしまい、興醒めしたことがあるのです。店主はアンチDiMarzioかなんかだったのでしょうか?試奏はクリーンで弾いていたのに…なぜあそこまであのモデルを嫌っていたのか今でも謎です。ちなみに、そのあと店主が「あんたはこれを買え」と押し付けてきたのが、カスタムショップのテレキャス。バットの握りのような超絶極太ネックの個体。ジャラーンと鳴らすと、胸にビリビリと振動が伝わるほどのとんでもない胴鳴り。「こりゃすごい」と思いましたが、どうにもネックが太すぎて指運が覚束ず、モノにできそうもなかったので試奏だけで帰ってきました。そもそも、ストラトじゃないし。チャラいイマドキストラトを求めに行った客に、ドヤ顔でテレキャスを押し付けてきた店主の心情は時間がたった今も理解できていません…。

以前所有していたカスタムショップのストラトはCustom Classicシリーズの個体で、それはそれで要求を満たす大満足のギターでした。このシリーズはアメスタと同じような現代的な仕様のギターをベースに、材をグレードアップしてカスタムショップ品質で製造しました、みたいなラインナップだったと記憶しています。

ボディは塗り潰しであるもののセレクトされたアルダーを採用していたり、ネックはフィギュアドメイプル材で美しい虎目がでてたりと、材の良さからくるゴージャス感も所有欲を満たすのに貢献していました。

そこで、同じギターを買い直すのもありかなと思い、ネットサーフィンすること一週間…当該モデルで黒メイプルの状態の良い中古品は残念ながら見つけられませんでした。色違いやローズ指板などは見つけたのですが、何故かどーしても黒メイプルでないと納得できず。

ちなみに、黒メイプルはブラッキーへの憧憬と書きましたが、Claptonの好きな演奏はderek and the dominosのアルバム「愛しのレイラ」です。私が中学の頃、父親が海外出張のお土産で買ってきたのが、紙ジャケ版のCDアルバムでした。それ以来ジャケットを眺めたり、クラプトンの伝記を読みながらひたすら聴きまくる日々。乾いたサウンドの中で主張する太いギターの調べ、そうその音こそが私のストラトに対する原体験であり、それを奏でていたギターは憧れのブラッキー…ではなく、ブラウニー!!

そうです、私の中ではストラトといえばブラウニーです。「愛しのレイラ」のジャケット・アートにも2トーンサンバースト・メイプルのブラウニーが登場します。

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そういえば、昨年仕事で渡米した際にブラウニーと運命的な対面をしました。一週間の出張で東海岸から西海岸へと飛び回ったのですが、最終日がシアトルで一日フリーになった為、一人でフラフラと観光して過ごすことにした時の話です。

その日はあいにくの雨。しかも3月の寒い時期だったので、朝方は雨が雪混じりになってしまい外を出歩くにも震えながら歩く始末。ホテルを出たは良いけど、下調べもなく出てしまったので、とにかくどこかに入って暖をとりたい一心で立ち寄ったのが、ホテルの裏にあったポップミュージアムでした。

いかにもな観光スポットに行くのは気が進みませんでした。しかし、このような事情なので仕方ないと思いながらしぶしぶ入場…のつもりが、そこは思いがけず私の青春時代を彩った憧れのアーティスト達の展示物が立ち並ぶ楽しい施設でした。

受付の階段に飾られたジョン・ボーナムのドラムセットを拝んで二階の展示スペースに登ると、目の前によく見たことのあるギターが展示されています。指板やボディの塗装の剥げ方まで見覚えのあるこのギター。よく知っているギターに間違いないのだけど誰のギターだっただろうかと案内に目を落とすと、そこには「BROWNIE」の文字が…!!

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思わず声が出ました。

なるほど、たしかにネックの6弦とナットの間にタバコの焼け焦げたあとが。紛れもなく本物のクラプトンのブラウニーのようです。どうやら、クリスティーズのオークションで落札した主は、ここシアトルのポップミュージアムを運営するポール・アレン氏だったようで、氏はマイクロソフト創業者として成功したのちに、成功の原動力となったロック・ポップカルチャーのアイコンへのリスペクトから財団を通じて集めた遺物を自らのミュージアムで展示・保護しているとか。

思いがけない出合いに興奮したのと、当日は平日の昼前ということもあり人がまばらだったので、小一時間ほどブラウニーの前にしゃがみ込んで傷の一つ一つまで具に眺めて過ごしました。

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別刊PlayerのThe Guitarなる雑誌で、ブラウニーを詳細な写真と記述で紹介する記事を何度も読んだことがありましたが、やはり写真と現物は全く違いました。いくら見ていても飽きないばかりか、今にもクラプトンが手に取って音を鳴らすのではないかといった臨場感が伝わってきます。

最終的には静止状態の展示物の動画を撮り(何故そうしたのかはわかりませんが)、満足してその場を去ることができました。

というわけで、私の中では紛れもなくストラト=ブラウニーのイメージです。

それでも、私がこれから所望するギターはブラッキーの黒メイプルでなければいけません。

なぜなのか。

ブラッキーはクラプトンがある時期以降長いことメインギターとしたことで有名ですが、その出自が、別々の個体からいいところを寄せ集めたコンポーネント・ギターである、というのが、ギターキッズの憧憬の対象となるに十分すぎる特徴となっていますよね。長く一線で使える道具として本人が必要と思ったものを集めて再構築した結果、クラプトンのキャリアを象徴するギターとなり得たわけです。ビンテージだからとか、スペシャルな仕様だからとか、音が良いからとか、ブラッキーを評する理由が全て後付けになってしまうというカッコよさが、このギターには備わっているのです。

つまりは、ブラッキーに憧れるということは、このギターさえ有れば他は必要ないと思えるほど長く使えるギターに出会いたい!と言う意味と同義です。黒メイプルはそれをギターに投影することで、自戒としたい部分もあるのかもしれません。

ブラウニーへの憧れとブラッキーへの憧れを比較して例えるなら、ブラウニー=「学生時代憧れた高嶺の花の美人」であり、ブラッキー=「お互いをよく知り添い遂げられる奥さん」のようなイメージが適切でしょうか…

ここまで書いてなんですが…よくよく考えてみるとそこまで思ってないかもしれません。黒メイプルはただ単に見た目がカッコいいから、も十分な理由である気がしてきました…

あ!でもやはり2トーンサンバーストはだめです!長く手にしているとブラウニーじゃない、似てないことが気になってしまうのは事実だと思います!ネックの形状、スカンクストライプ、ピックガード・ノブの焼け方…ブラウニーとなにか違うところを見つけてはストレスになりそうです!

取り乱しました。

そんなこんな想いを巡らせながら、漸くストラトを買いました。

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販売元の写真がカッコよく撮ってくれていたので載せておきます。(肖像権は私の元にあると思うので転載してもよいかと?)

このギターについてのお話はまた別の記事に書こうと思います。